まもなく離縁予定ですが、冷徹御曹司の跡継ぎを授かりました

 私は元々結婚に期待なんてしていなかった。

 昔から好きになった人には振り向いてもらえず、告白されてやっと誰かに必要とされたかと思えば二股をかけられ遊ばれる始末で私を好きになってくれる人なんてひとりもいなかった。

 だから良い縁談があると言われたときもすぐに政略結婚だと分かったけれど父や会社の役に立てるならその方がよかった。

 お見合い結婚だった両親も仲良く暮らしているし、私だって同じようになれるかもしれないとわずかな期待もかけた。

 そんな私が自分にはもったいないくらい素敵な巧さんと結婚できるなんて奇跡みたいなことが起きて、そんな身で小さな陰口に傷ついていちゃいけないと思ってきた。

 レイナみたいにキラキラした容姿ではない自分では不釣り合いで、みんなから疎まれて当然だと思った。


「巧さん夕食にしましょう」

 眉尻を下げる彼に微笑みかけ、見えないところでぎゅっと手を握りしめる。口角を必死に上げて無理矢理笑顔を作ったけれど、ぴくぴくと顔の筋肉が震えて悲鳴を上げていた。