まもなく離縁予定ですが、冷徹御曹司の跡継ぎを授かりました

「あと二ヶ月だから」
「え」
「一哉さんといられるのもあと二ヶ月だから。式典まで京都に行ったままほとんど会えないかもって思ったら私……」

 話し出したら珍しく素直な想いがあふれ出す。ちらりと見たら瞬きして驚いたような表情をしていて、ぎこちなく視線を逸らした。

「少しでも会いたいって」
「それ以上言うな」

 顔を上げ視線が交わったかと思ったら彼の顔が目の前にぐっと近づく。そのまま大きな手に頭を支えられ何度も何度も甘いキスが降ってきた。

「俺が何のために」

 息も絶え絶えに微かに何かを言っているのが分かったけれど、頭がぼぅっとして気づけばソファに横たわっていた。

 真上にいる一哉さんは唇を噛んで顔を歪める。どうしてそんな顔をしているのかと戸惑って声を出そうとしたら、ふわっと体が浮いた。

「え、ちょ」

 一哉さんは着物を着たままの私を軽々と持ち上げて、そのままふかふかのベッドの上にゆっくり落とされた。

「今だけでいい」
「今だけ?」
「何もかも忘れてこの瞬間だけ俺を見ていられるか」

 真剣なまなざしに一瞬たりとも目が離せなくなる。一哉さんだけの世界に包まれているようなぼんやりとした感覚の中、首を縦に振ることしかできなかった。このあと何が待っているのかも分かっていながら私はそれを受け入れた。

「結」

 何度も何度も名前を呼ばれながら慣れた手つきでいとも簡単にほどかれていく。はだけた着物がそっとベッドの下に落とされると初めて彼の肌が私に触れた。