久しぶりに会った妹は、遠目から見てもずいぶんと痩せていた。
 パサついた手入れのされていない、派手な色でカラーリングされた髪。相変わらず派手な格好をしていた。
 ひと目で、健康的な生活を送っていないことがわかる。
 待ち合わせたコーヒーチェーン店。喫煙室でスマホを険しい顔で眺めながら、タバコをふかす妹の姿に、ふつふつと怒りの感情がわいてきた。
 私が来たのに気付いた妹は、喫煙室から出てきてテーブル席へついた。
 飲みかけのコーヒーがあり、妹は時間よりもだいぶ早く来ていたようだ。
 後からきた私に店員さんが水とおしぼりを運んできてくれて、去っていく。
「お姉ちゃん、元気そうだね」
「……そう見える?」
「見えるみえる、昔っからのお姉ちゃんの取り柄って、そのくらいだもんね」
 ケラケラと笑う声は、私の心をざわざわさせる。ネイルの欠けた指先が、私を無遠慮に指さした。
「なに、今日はお金を返しにきてくれたの?」
 感情に任せて言葉までトゲトゲしくなっているくせに、そういう自分に慣れていないから気を抜くと泣きそうだ。
「いきなりお金の話? そういうのって雰囲気悪くない?」
 妹の言葉を、私は理解できなくてぽかんとしてしまった。
 どうして私がそんなことを言われなきゃいけないんだ。
「ならなんの用? 自分のしたこと、忘れちゃったの? 泥棒したんだよ、私の大事なお金を!」
 ここが人が多い日中のコーヒーチェーン店だとか、そういうことが頭からすっぽり抜けてしまった。
 目の前で罪悪感の欠片も見せず、へらへらしている妹しか見えていなかった。
 しん、と一瞬店内が静かになった。が、すぐにまたお客さんたちは自分たちの話や作業に戻っていく。
 ちらちらと、私たちを見ている人もいるけれど、気にする余裕がない。
 泥棒、とはっきり言われた妹の顔は怒りに満ちていた。
 こんな場所で私が大声を出すとは想像も出来なかったんだろう。
 大人しい私が、反撃してくるなんて信じられないと思っているのかもしれない。
 そのくらい、必死に貯めたあのお金は大切で大事なものだった。
 盗んでいった妹には、それがいまもわからないのだ。
「……バッカじゃないの? こんなところで大声出して、恥ずかしい。だからお姉ちゃんは可愛げがないって言われるんだよ」
「誰に」
「お父さんとお母さん。お姉ちゃんはおとなしくて言ったことしか出来ないから、可愛くないって言ってたよ」
 妹は、どうだと言わんばかりに得意げに、憎たらしい顔をして私にそう言った。
 泣くか?泣くか?と伺うように、にたりと笑っている。