気を使い合いながら、夏が過ぎて。
 秋の終わりには二人暮らしにすっかり慣れて。
 強烈な寒さと共に訪れた冬は、いったい僕たちをどんな風に変えるだろう。
琴子さんは、僕のことを国治さんと名前で呼んでくれるようになった。
 
「おはようございます」
「……おはようございま……」
 最後まで挨拶を言い切る前に、大きなあくびが出てしまった。
 今日は珍しく、僕と琴子さんの休みが合った。なので、琴子さんはリラックスした部屋着の上にモコモコの羽織で着込んでいる。
 靴下までモコモコのだけど、この間それで床で滑って慌てていたのを目撃した。
 窓から覗く冬の空はあいにくの曇り、しかもどんよりと黒く重いやつだ。
「お昼から大雪予報が出てるんですよ。降らないうちに、買い物に行っちゃおうかな」
 僕のために熱いコーヒーをいれてくれた琴子さんが、テレビの天気予報を見ながら言う。
 時刻は八時近く。リポーターがまだ雪の降らない駅前で中継をしていた。
 昼から、明日の午前中まで酷い大雪が降り続くらしい。
 すでに運休を決めた新幹線もあるらしく、中継は別のカメラから駅のホームを映していた。
「やはり天気予報は当たりそうですね。見越して昨日のうちに、ホテルの倉庫から雪かき道具を出しておいて良かった」
「明日は総出でお客様駐車場の雪かきですね」 
「そうだね。平日だから宿泊予約も少なかったけど、キャンセルも出そうだな」
 その場合もしっかり引き継ぎしてきたし、スタッフが雪の影響で出勤できない場合のことも考えてきた。
「大雪が降ったら、坂崎は喜びそうだ。早く除雪機を使いたいって言ってたよ」
「ああ、確か一度見たことがあったような? 三台くらいありましたよね、家庭用の除雪機」
「滅多に大雪は降らないし積もらないけど、いざという時には雪かきスコップだけじゃ無理だからね。ガソリンも入れたし、エンジンも掛かったから大丈夫だと思う」
 明日は朝から雪かきを覚悟して、着替えを持って行かないと。
 雪かきは全身を使う運動だ、すぐに汗だくになる。