そして、ようやく俺は!天使と!結婚!出来る!

「無理矢理はあかんぞ」

殿下の執務室で、殿下が席を外した時だった。
イーサンが真面目な顔をして、俺に言った。

「天使、ちっちゃいだろ?
 無理矢理したら壊れるぞ」

「何の話をしている?」

グレイスの身長の話をしているのか?
確かに彼女は小柄だ。 
だが、無理矢理するとは、壊れるとは何の話だ?

イーサンが黙って、手首を回して指をぐにゃんぐにゃんする。

「判らんか?」

「うーん?」

最近、俺も悩む時『うーん』と言う様になってきていた。
遺伝という名の呪いから逃れる術はないのか。


「仕方ねぇな、裂けるんだよ、ここ」

イーサンが人差し指を下に向けて、指し示し……
それでやっと。

裂ける?裂ける?
えっ、裂けるの!

イーサンも殿下も既に結婚していたし、こいつは俺を騙したりしないので、本当の話だと思った。

俺のオレはサイズ的にどうか、他人と比べた事がないから判らないが、
グレイスのグレイスが小さいのは想像がついた。

俺は無意識に自分の手で押さえた。
こんな所が裂けてしまったらと、考えただけで
血の気が引いた。

俺の手はグレイスを幸せにする為に存在していて、グレイスを傷付ける為じゃない。

「ふたりで良く話し合うんだ、時期は天使に決めて貰え
 先は長いんだから、絶対に無理はさせるな」

グレイスから、許しを貰うその日まで。

『白い結婚』って言うやつだ、とイーサンが締めくくった。