帰り道を奪われて

薄い巫女衣装では、冬の雪が積もる山を歩くのはまるで修行のようだ。体は寒さで震え、手が悴んでしまう。雪のせいで歩き辛く、捧げ物を落とすわけにはいかないため、ゆっくりとしか歩けない。

「ハァ……ハァ……」

息を吐くたびに白い息が口から出て行く。神社までの道のりがやけに遠く感じ、永遠にたどり着くことができないのではと思えてしまう。

一歩ずつ進んでいくたびに体が震え、心ごと凍り付いてしまいそうなほど冷たい風が紫乃の体を乱暴に叩く。

「毎年、巫女役の女の子、こんなにも大変な思いしてたんだ……」

雪は気が付けば紫乃の膝下まで積もっており、一歩を進むだけでもかなりの体力が削られていく。紫乃の体は一歩ずつ限界に近付き始めていた。

「あっ……!」

雪で足が取られ、紫乃は転んでしまう。その拍子に捧げ物が入った箱が手から落ちて行く。箱の中には日本酒が入れられていた。瓶が割れてしまったのでは、紫乃の顔は真っ青になっていく。