俺達のクラスは一年一組。ちなみに一年は一組しかない。ちなみに二年生と三年生は二クラスだけ。全校生徒合わせて百人弱の生徒数だ。

うちの学校は、とにかくクラブの数が多い。他校との差別化を図るためか、なんだかわからないけど、クラブ数50って多すぎる、
一人でも居ればクラブと認められる。

(それってクラブって言えんのかよ。)

「あーきーらーくーん!!」

 俺が席につくのを見計らったかのように、黒髪を刈り上げたガタイのいい男が、俺の机に遠慮なく腰を下ろした。

「なんすか、今日も朝から。谷口剛(たにぐちたける)先輩」

「いいかげん、うんって言ったらどうだ?」

「返事、変える気ないんで」

「俺が、これほど欲しいと思った人材は、お前が初めてだ!春宮彰!」

俺の机に腰掛けながら、ぐりっとした二重に大きな鼻と口が特徴的な先輩が、鼻息荒く圧をかけながら俺を見下ろした。

「もうまもなく、一ヶ月近いっすね、早く諦めてください」 

「嫌よ嫌よも、というだろう?」

声を顰めて、真面目な顔で落とし込みに入ろうとする。

「マジで嫌です……俺、帰り砂月と帰るんで」

谷口先輩から踵を返すと、ちらりと対角線上の砂月を見た。砂月が、隣の席の何とか愛子とかいう奴と、楽しげに喋っているのが見えた。

「出た出た!砂月が理由なら俺が送って帰るって言ってるだろ?」

俺の後ろの席に座るや否や長い足を、俺の座席の下から、つま先で蹴り上げながら、長身の男が会話に入ってくる。

「うるせーよ!駿介(しゅんすけ)。大体お前の家、俺らと逆方向だろっ」 

同じクラスの三浦駿介(みうらしゅんすけ)。邪な男の一人だ。コイツは砂月に気がある。それも大いにだ。

「お前が送って行かなくたって、砂月のためなら、毎日逆方向でも俺は送るよ」 

にやりと口角を持ち上げる、その端正な顔を、マジで殴ってやりたい。

短い茶髪に切長の目元で、鼻筋はすっきり通っている。整った薄めの唇に、左耳にピアスが光る。180近い高身長だが、俺の方がコイツより2センチだけ背が高い。

身長以外に、コイツに見た目で勝てる要素はあるのだろうか。考えんのも嫌になる。

「人見知りの砂月が、嫌がんだよ、そんなこともわかんねーのかよ、ばーか」

「砂月のひっつき虫だな、砂月もいい迷惑だと思わないのかよ」

振り返りもせずに、返事した俺の椅子の下を、また駿介が蹴った。

「いちいち蹴んなよっ!砂月はお前には関係ねーだろ!」

俺は一息で言うと駿介に向けた半身を、再び前に戻した。勢いよく戻したせいで、谷口先輩の鍛え上げられた上腕二頭筋を鼻先が掠めて、汗と土の匂いがした。