「なんで?高校では、手繋いだらダメって決まりでもあんの?」

「……そうじゃないけど、彰は、その……困らないかなって」

「困る?」

「うん、他の女の子とかにどう思われる……かなとか」

私は、あの時の情景が頭の中に蘇ってくる。

「俺が?別に他の女に何思われてもいいけど。砂月が憑かれなかったらいいわけだし。
前の居たじゃん、死んだゴキブ」 

「彰っ!」

私が、一番苦手な虫の名前を言おうとして意地悪な顔をした彰が、私を見下ろした。

「もうクセみたいなもんじゃね?幼稚園の時からだからさ。砂月が嫌ならやめるけど?」

彰はズルい。答えを私に求めるから。答えなんて、決まってるのに。

「じゃあ……あの黒いの、下足にいるかもしれないからお願い」

頬が熱い。彰は、多分顔の真っ赤な私から視線をそらすと、頭をガシガシと掻いた。