「砂月、そろそろ公園だからな」

「気をつけるね」

自転車で少しだけ前を走る、お日様色の髪色を眺めながら、私は小さく答えた。

彰と、高校に通い始めて2週間が経った。小さな頃から、すぐに憑かれてしまう私の事を、彰はいつも側で守ってくれる。

高校近くの公園が近づくと、いつも彰は自転車で私の少し前を走る、私を守るために、コワイ思いを私がしないように。

そうやって三歳の頃からずっと、私の隣には彰が居て、ずっと守ってくれた。

(彰、大好きだよ)

いつからだろう、素直に言葉に出来なくなったのは。

ーーーーきっと、この間、あんな場面をみてしまったからだろう。彰の後ろ姿を眺めながら、私は小さくため息を、吐き出した。

「砂月、ダンゴムシが左端1匹蟻が群がってる、その先に、蝶々が轢かれて1匹な」

淡々と前を向いて、辺りを見渡しながら彰が憑かれないように情報を与えてくれる。

「分かった、見ないようにする」

「絶対だかんな」

ぶっきらぼうな、いつもの声が前をいく彰の後ろ姿から降ってくる。

私は、彰の後ろ姿だけを見つめて、蟻に群がられたダンゴムシの死骸も、蝶々の死骸も見ずに駆け抜ける。

ようやく、校門について二人で自転車を停めた。

「今日も無事に着いたな」

「ありがとう」

彰が太陽みたいな笑顔でニッと笑った。とくん、と心臓が跳ねる。私は彰のこの笑顔が一番好きだから。彰は金髪頭を掻きながら、私の手を引いた。

私は、その瞬間が一番ドキドキする。

幼稚園の頃からそうだった。彰は学校に着いて、下足ホールに着くまで、必ず、私の手を引く。

それは小学校6年間も中学校3年間も変わらなかった。今までは近所の子ばかりの学校だったから、特に揶揄われることもなかったけど、高校は、県に一つしかない為、初めて登校した時は、入学早々だったから、私達の事を知らない同級生の何人かに揶揄われた。

「ねぇ、手、繋がなくても大丈夫だよ?」

彰の大きな瞳がまんまるになる。