……あ、でも。

「でも、周りに家とか何もなかった」

あの時の光景がほんの少しだけ浮かんできた。

全部、赤く染ってるけどなんとなく見える。

思い出せる。

「雪が降ってて、明るくて……たぶん朝かな。ふたりの血が少しだけ積もった雪からコンクリートに流れてた」

「充分だ。ありがとうな叶恋」

シュウさんに頭を撫でられた。

「ごめんなさい、もっと鮮明に覚えてたら……」

「当時6歳で、12年前のことだぞ叶恋。今それだけ覚えてる方がすげぇって」

「羅虎……」

「大丈夫。お前の分まで俺が全部洗いざらい暴き出すから待ってろ」

だから、と言葉を続ける羅虎。

「だから、タラレバ考えたりすんな。全部過去なのには変わりなくて、残された俺らにできんのは親のこと知ることと神楽組を潰すことだけなんだから」