お隣のヤクザに要注意Ⅰ

その日は父さんの仕事用に使ってるアパートの一部屋で過ごした。

「今日は疲れただろう。ゆっくり休みなさい、明日学校まで送ってあげるから」

「うん……おやすみ父さん」

父さんのおかげで、母さんから受けたショックは安らいでいった。

そして次の日、いつも通り学校に行って、夕方になれば父さんが迎えに来てくれた。

「父さん、これから母さんの所に行くの……?」

「……ううん、もう用事は済ませた。帰ろう羅虎」

そう言った父さんからは嗅いだことのない匂いがした。

冷たく、闇に包まれた表情。

今思えばそれは血の匂いで、母さんと男を殺した後だった。

そんなことも知らない俺は父さんと一緒にアパートへ帰る。

後にテレビでニュースになり、俺が知ったのはその時だった。

「父さん、母さん……死んだの?」