──遡ること11年前。

俺は当時10歳で、ごく普通の一軒家に住んでいた。

普通なのは一軒家だけ。

家に帰れば、2階の寝室から母さんと男の声がする。

「ねぇ、もっと……旦那だっていないんだし」

「でも子供帰ってくるんだろ?」

「あぁ、あんな子供どうでもいいわよ。旦那だって当時結婚してた女から奪いたくて奪っただけでもう飽きちゃった」

俺が愛人との子供だったと知ったのはその時。

しかも母さんは不倫してて。

どうでもいい……?

毎日美味しいご飯を作ってくれて、今着てる服だって洗濯してくれて。

なのに、どうでもいい……?

部屋のドアを開けて中に入った。

「っ羅虎……」

「母さん、俺……どうでもいい存在なの?」