お隣のヤクザに要注意Ⅰ

家族……か。

俺にとっての家族は冷酷で温かさの欠片もなかった。

けど叶恋にとっての家族はきっと、冷酷の欠片も無いんだろうな。

「シュウさん、12年前のその事件……なんで叶恋の両親は殺されたんすか?」

「それは……」

「シュウ」

ずっと黙ってた組長がシュウさんの名前を呼んだ。

「っ……あ」

シュウさんに釣られてミラーを見れば、叶恋がほんの少し寝相を変えてて。

あぁ……起きるかもしれないから気を遣ったのか。

せっかく楽しい思い出で終わろうとしてんのに、聞きたくないよな……。

「……また今度な」

「わかりやした」

まぁ、今はまだいいか。

それから車内は帰るまでずっと静かだった。