お隣のヤクザに要注意Ⅰ

それでも、『大丈夫』って『虎は私が思ってる最低な人じゃない』って思えない自分が嫌だ。

「……私、いつからこんな虎のことばっか考えるようになってたんだろ」

「さぁな……わりと序盤だったと思うが?」

ピタッと立ち止まって虎たちを見た組長。

その顔は切なそうで、何かを後悔してるようだった。

「俺は愛がある日常が当たり前だと思っていた。だけど妻は病気であることを俺に黙ってて……そのまま天国に行ってしまった」

組長の……奥さん?

「後に残るのは、なんでもっと愛せなかったんだろうとか、もっと寄り添えば妻は長生きできたかもしれないとか、後悔ばかりだ」

「組長……」

「どんなに後悔しても、現実は甘くない。会いたい人はもう会えないんだ。……花園もそうだろ?」

っ……そうだよ、どんなに会いたくてももうお母さんとお父さんには会えない。

だからヤクザに復讐したくて、事件のことを知りたくて生きてきた。