「だけど私は……虎のことなにも知らない。好きなものも嫌いなものも、たまに見せる素の虎でほんの少しわかるくらい」

「素、か……あいつあれでも花園には素で接しているんだぞ」

そうかもだけど……。

「去年までのあいつはどこか空っぽで、自分で自分をおかしくさせて殺してた。お前と出会ってからは生き返ったんじゃないかってくらい……そうだな、止まってた時が動き出したみたいだよ」

そんな大袈裟な……。

……でも、組長の表情でわかる。

それが大袈裟なんかじゃなくて、本当なんだと。

「私はそんなすごい人間じゃないよ」

「あの虎を骨抜きにしてるんだからすげぇよ。お前も小悪魔だよな、虎を尻に敷いてんだもん」

私が小悪魔?

たぶん今までの女が素直だっただけだよ。

「でもそうだな……虎はああ見えてベタだからな。お前との思い出をたくさん作る方が喜ぶと思うぞ」

「私との?」