❆叶恋side❆

「あーもう、髪の毛まとまんないー……っ」

今日はついに海に行く日。

あと一時間後には出発なのに、髪の毛がうまくまとまらない。

サイドお団子にしたいのに……!

―――ピンポーン♪ピンポーン♪

インターフォンが鳴って時計を見れば、まだ全然時間はあって。

「はーい」

ドアを開ければ、黒Tシャツを着た虎がいた。

「虎、なにしにきたの?」

「言い方きっつー。こっちは3日も会えなかったから補給しにきたんだけど?」

「あー……」

なんだかんだで私もユイも仕事がないのをいいことに3日間ユイの家に泊まった。

そういえば、3日間虎とLINEしかしてなかったかも。

部屋に入ってくるなり仏壇の前に正座した虎。

「叶恋を海に連れていきます。安心してください」

……ほんと、こういうところ律儀なんだよね虎は。

「叶恋ちゃーん!」

「ぎゃっ!!」

油断してれば、ぎゅーっとありえないくらいきつく抱きしめられた。

っ……虎の匂い、久しぶりだ。

「は、離してよ!暑い!」

「ふざけんな。補給させろって言ったろ」