「っぼく、もうママとはぐれちゃだめだよ?」

こんなに幼いんだもん、ママとパパがいなくて寂しかったよね。

ばいばいと手を振ってお母さんと歩いていく男の子。

私も……あんな風にお母さんと手を繋いでいたな。

「叶恋、あの人……お前の母親にそっくりだったな」

……やっぱり虎にはバレてたか、私が足を止めた理由。

「こういう所に来ると、どうしてもお母さんとお父さんに会いたくなっちゃうんだ。ここにいる家族たち、みんな私の理想の家族みたいで……まだどこかにいるんじゃないかって、探せば会えるんじゃないかって思っちゃう。会えるわけないのに……お母さんとお父さんはもういないのに」

この世界になんていない。

もう遠くにいるふたり。

とっくにわかってるのに……縋ってしまう。

私の理想に。

「俺もあんな風に幸せな家族が理想だったよ」

「虎……」

私を見て、力なく笑った虎。

「理想と真逆な人生に俺は腹立つけどよ、きっと……この狭い人生でしか手に入れれないものとか味わえないことすっげえあると思ってる。神って残酷だから自分の手で見つけるしかねぇんだよ」