恐怖と混沌の中、果てしない狂愛に包まれる。

 でも今は、逢伊さんの気持ちを受け止められるほど……余裕なんてない。

 ……あるはずが、ない。

 数時間前なら私はその言葉を喜んで受けていたと思う。

 だけど今の現状は、何もかもが正反対になってしまっているんだ。

 逢伊さんは驚きと恐怖を入り混ぜている感情の私に、追い打ちをかけるような言葉を続けてくる。

「だけど璃々は俺がアピールしてるのに、他の男と話したり一緒にいたりしてた。だから、俺は思ったんだよ。全人類をゾンビ化させれば、璃々は俺だけを見てくれるって。」

「そ、そんなの、おかしい……っ!」

「何がおかしいって言うの?好きな子の為に何かをするのは当然。俺以外見てほしくないって思うのも、当たり前なんだよ?」

 私の噛みつくような言葉に、逢伊さんは当たり前だという表情で淡々と話をする。

 それが凄く……怖い。

 今逢伊さんの腕の中にいるのも、耀太が冷たくなってしまったのも、世界にゾンビが蔓延している真実も……何もかもが怖い。

「あい、さん……っ。離して、くださいっ……!」