恐怖と混沌の中、果てしない狂愛に包まれる。

 逢伊さんは不意に、そんな嫌な事を呟いた。

 耀太の腕の中にいるから、何が起こっているのかは全く分からない。

 だけどすぐに、私は身をもって知ることになった。

「まぁ良いか。せっかくもう少しで璃々が俺のになったっていうのに、取るだなんて。……やっぱりあの時、殺しておけばよかった。ふふっ……。」

 よく分からない言葉ばかりを並べて、不敵に笑った様子の逢伊さん。

 その瞬間、逢伊さんのこんな言葉と共に……パンッという、乾いた銃声が辺りに響いた。

「じゃあね。」

「……っ、く、そっ……っ。」

 ……え?

 私はその銃声に思わず瞼を開け、目の前の光景に言葉が出なくなってしまった。

 目の前にはさっきまで私のことを抱きしめてくれていた耀太が……頭から血を流してその場にぐったりとしている。

「よ、よう、た……?」

 何が起きているのかが理解できずに、耀太をしきりに呼ぶ。

「耀太っ……耀太……っ!」

 だけど耀太は全く目を覚ましてくれずに、体温だけが失われていく。

 耀太の頭には、見る限り銃弾が貫通していた。さっきの銃声が、その証拠。