恐怖と混沌の中、果てしない狂愛に包まれる。

 今逢伊さんがどんな表情をしているのかは分からない。

 でも……きっと怒っているんだろうなってことだけは、嫌でも分かった。

 私がきっと、勝手に家を出て行ったから怒ってるんだ……。

 だけど私は、逢伊さんのところには戻れない。戻りたく、ない……。

「璃々、こっちにおいで。そんな奴のところにいたら、璃々もいずれゾンビに襲われちゃうよ?」

「……っ。で、でも……私はもう、逢伊さんのところには、戻れません……っ!」

 ゾンビに襲われるのは嫌だけど、逢伊さんのとこに戻るよりはマシだとおもう。

 死ぬのなら逢伊さんに殺されるんじゃなくて、ゾンビに殺されて死んだほうがずっといい。

 恐怖なんて測れるわけなかったけど、私は大きな声で逢伊さんに反論した。

 また、逢伊さんのこと、怒らせちゃうかも……。

 一瞬そう思ったけど、このまま何も言わないよりは全然良いはず。

 ……でも、逢伊さんがそんな簡単に許してくれるわけ……なかった。

「そっか、戻れないんだね。手荒な真似はしたくなかったけど、仕方ないか。」