恐怖と混沌の中、果てしない狂愛に包まれる。

 私はそう思うことにして、大人しく抱きしめられていた。

 触れられているところから逢伊さんの熱が伝わってくるようで、無意識に体温が上がるのが分かる。

 ドキドキと心臓がうるさく鳴っていて、聞こえていないか心配になる。

 だけどそんな中、逢伊さんが追い打ちをかけるように私の耳を触ってきた。

「ひゃぁっ……!」

「まだ慣れないの?最近ずっと触ってるのに。」

 こ、こういうのは慣れる慣れないの問題じゃないんですっ……!

 耳元でそんなことを言ってくる逢伊さんに、そう思ってしまった。

 私だってこういう弱点は克服しなきゃって思うし、苦労しそうだから治そうと頑張っている。

 でも慣れないものは慣れないから……仕方がない。

 自分に言い聞かせるようにして、そんな考えを頭の中に巡らせる。

 だけど逢伊さんは、お構いなしに私の耳を触り続けている。

 逃げ出そうにも逢伊さんの強い力で逃げられないから、手も足も出ない。

 どうしよう、これじゃあ私の体が持たない……。

 ふっとそう考えてどうにか逃げられないかと、頭をぐるぐると回転させる。