恐怖と混沌の中、果てしない狂愛に包まれる。

 ……ほ、本格的にまずいかもしれないっ……。

 そう考えてしまって、思わずぎゅっと目を瞑る。

 その瞬間、目の前からゾンビの苦しそうな悲鳴が聞こえてきた。

 え……?何が、起こって……?

 目を瞑っているから、何が起こっているのかは分からない。

 だけどゾンビじゃない誰か……がいる気配がして、ゆっくりと瞼を開けた。

 ゆっくりと開けていく視界。

 そんな私の瞳に映ったのは……私を心配そうに見つめるイケメンさんだった。

 短く綺麗にセットされている紺色の髪に、不安そうにしている漆黒の瞳。

 飾り気はないけど、制服のようなものを着ていて……凄くかっこいい。

 でもその時、「あっ。」と思わず声を上げてしまった。

「もしかして……逢伊さん、ですか?」

「覚えててくれたんだね、そうだよ。璃々、久しぶりだね。」

 この人は闇重逢伊(やみしげあい)さん。私の一個上で先輩ゾンビハンター。

 十歳の時にSランクハンターに昇格し、最年少記録保持者。

 ゾンビハンター業界の中でも屈指のイケメンさんで、逢伊さんを追うものは数知れず。