恐怖と混沌の中、果てしない狂愛に包まれる。

 その手にはこれまた高級そうな、綺麗なドライヤーが握られていた。

「はい、乾かすからね。」

「お、お願いしますっ!」

 乾かしてもらうだけなのに、妙に身構えてしまって体が固まってしまう。

 その後、後ろからドライヤーの音が聞こえ始め温かい風が当たった。

 熱すぎなく、冷たすぎなくというちょうどいい温度の風。

 そのまま逢伊さんは私の髪を乾かしてくれ、不意に私の耳に逢伊さんの大きな手が当たる感触がした。

「ひゃっ……。」

 思わずそんな変な声が口から洩れてしまい、ううっと涙目になる。

「あれ、璃々。耳とか無理なタイプなの?」

「は、はい……。耳とか触られるの、あんまり得意じゃなくて……。」

 逢伊さんに後ろからそう聞かれ、正直に頷く。

 昔から耳とか首元とか触られるのは得意じゃなく、触られたら変な声が出てしまっていた。

 最近はそういうことが減ったから勝手に治ってるものだと思ったけど……そういうわけじゃなかったみたい。

 へ、変な事知られちゃったな……。は、恥ずかしさでどうにかなりそう……。