恐怖と混沌の中、果てしない狂愛に包まれる。

 そんな疑問を抱いて首を傾げていると、逢伊さんは突然ある事に気付いたようにこう言った。

「あ、璃々。髪乾かしてないよ。ドライヤー脱衣所にあったと思うけど、使わなかったの?」

「ど、ドライヤーですか?なかったですよ?」

 脱衣所で着替えていた時も、ドライヤーらしきものは見当たらなかったはず。

 だからまだ髪が濡れているけど、私は別に気にしない。

「髪乾かそう?待ってて。」

「逢伊さん、私このままでも大丈夫ですよ?」

「ううん、ダメ。ドライヤー持ってくるから、そこに座って待ってて。」

 逢伊さんはソファを指さしながら、踵を返し脱衣所のほうへと向かっていった。

 うーん、私別に髪濡れてても気にしないけどなぁ……。

 そんなことをぼんやり考えながら、言われた通りソファに座って待っておく。

 逢伊さんがいないだけでも、こんなに落ち着かなくなるものなんだ……。

 このお家は一軒家だけど、何もかもが広いから緊張してしまう。

 高級そうな家具もたくさんあるし、ついそわそわとしてしまっている。

 そうやって周りを意味もなく見回していると、逢伊さんが姿を見せた。