恐怖と混沌の中、果てしない狂愛に包まれる。

 逢伊さんは私の頭を撫でてくれたけど、抱きしめることでいっぱいいっぱいな私には、そんな器用なことはできない。

 でも頑張って逢伊さんに”大丈夫”を伝えるために、力を込める。

「璃々……。」

 逢伊さんは呆気にとられたような声を出し、私の名前を呼んだ。

 ん?どうしたんだろう?

 気になって勢いよく逢伊さんのほうを見る。

 すると、これ以上ないくらいの笑顔を浮かべている逢伊さんと視線がぶつかった。

 その距離は、少し動いたら……キスができそうな近い距離。

 ……って、私は何を考えて……!?

 そう思うと急に恥ずかしくなってきて、急いで逢伊さんから離れた。

「あ、逢伊さんっ!確かお風呂の準備は、整ってるはずなので……さ、先にどうぞっ……!」

 その恥ずかしさを打ち消すため、早口でそんなことを言う。

 焦りからか恥ずかしさからか、語尾が上がってしまったけど、そんなことまともに考えられない……。

 だけど逢伊さんはそんな私を見つめて、ふっと頬を緩めた。

「ううん、先に璃々入ってきなよ。着替えは……これを使ってね。」