恐怖と混沌の中、果てしない狂愛に包まれる。

「どうぞ、逢伊さん。」

「ありがとう、璃々。いただくね。」

 逢伊さんはそう言ってにこっと笑ってから、コーヒーに口をつけてくれた。

 美味しくできてるか分からないから、心配だっ……。

 私が飲んだってただ苦いだけだから、逢伊さんの反応が不安。

 美味しくできてますようにっ……。

 心の中でそう願って逢伊さんの反応を待つ。

 だけど、いつまでたっても逢伊さんからの反応は帰ってこない。

 も、もしかして美味しくなかったのかも……!?

 そう思ってちらっと逢伊さんのほうを見てみる。

 でもその拍子に、逢伊さんと不意に目が合った。

 何て言われるのか分からず、思わず身構えてしまう。

 だけどそんな私の耳に聞こえてきたのは、嬉しそうな逢伊さんの声だった。

「璃々、このコーヒー今まで飲んだどれよりも美味しい。もしかして……手慣れてる?」

「へっ……?い、いえ、初めて淹れました……。」

 お母さんやお父さんは苦いものが苦手だからコーヒーは飲まない。

 紅茶を淹れるのは慣れてるけど、コーヒーは初めて淹れた。