今なら殺せる。オットーはそう思った。部下が邪魔だが一緒に始末してしまえばいい。敵にやられたと釈明すればいいさ。

 構えたワルサーをラインハルトに向ける。気配を感じたのか、少佐の顔が上がった。

「オットーか」
「少佐殿」
「隊は、味方はどうなった」
「全滅です。全軍に退却命令が出ました」
「そうか」

 いったん構えたワルサー拳銃を、しかしオットーは静かに下した。ラインハルトは死にかけている。なにも今殺す必要はない。放っておけばいいだけだ。そう判断したからである。