【短】虚弱なウサギと乱暴なトラ

保健室に帰った俺は、事務仕事に手をつけながら、十数分後、扉をノックした問題児をいつも通り迎える。




「失礼します……あの、ごめんなさい……また、ベッドを使わせてもらっても、いいですか……?」


「あぁ。記録用に、熱は計っておけ」


「……? ……はい」




気弱で虚弱なくせに、変なところがタフで、頑張り屋な“ウサギ”。

6歳も下のそいつの魅力に気づいてしまってから、俺は猫を被ることにした。


知れば知るほど放っておけなくなる小動物だが、変わらず怯えを見せるそいつは、きっと俺の“獲物”にはならない。

この手で可愛がれないなら、せめてウサギが1人で、あるいは他の誰かと幸せに生きていけるように……。


“先生”として、その体との付き合い方を教えてやろう。

俺は、密かにそんな決意をした。






――そんなウサギが、プルプル震えながら俺の腕に転がり込んで来たのは、その1年後のことだ。




[終]