男装令嬢は竜騎士団長に竜ごと溺愛される

馬達も興奮気味に足踏みをする。

さっきまで不貞腐れていたサラも、
突然のお祭り騒ぎに胸が高鳴り、柵まで駆け寄って息を呑む。

スタート前の緊迫したひと時、
サラを射抜く様に見るカイルの熱い目線に時が止まったかのような錯覚を覚え、
目を逸らす事さえ出来ず2人見つめ合う。

見守る団員達の声が急に静まる。

教官が振り上げた赤い旗を下ろした瞬間
 
7頭の馬達は一斉に走り出す。

砂煙を巻き上げ蹄の音が響く。

サラは胸の前で両手を組み、祈る様な気持ちで後ろ姿を見送る。

馬場の半周までは先頭の馬が2頭、両者一体横並びで飛び出す機会を狙っている。


ワーー!!と、観衆の声が再び轟く、
カーブを曲がり後は一直線だけだ。

団長は?
目を凝らして徐々に近付いて来る馬達を見つめる。

直線で一気に前に踊り出た馬が一頭、カイルだ。
カイルの鮮やかな手綱捌きに目を見張りドキドキが止まらない。

ラストスパート、どの騎手もムチで馬をひたすら叩く。
それを涼しい顔で1番手のカイルは姿勢を崩さず身を屈めるのみ。

ゴールの瞬間、

まるで全ての風景がスローモーションのように、ここにいる誰もが息を呑み、駆け抜ける馬達をただ見つめる。

カイルが誰よりも早く華麗にゴールを切った。

団員の歓声と残念そうな嘆きでゴール前は騒めき、団員達がカイルや騎手達に群がる。

沢山の団員の中にいるカイルは、圧倒的なカリスマ性と人を惹きつける魅力に満ちていて、サラは、この人は騎士団の団長なんだと改めて自覚した。
それと同時に急に近寄り難く感じてしまう。

教官と2人少し離れた所からその様子を見守っていると、
「凄いでしょ!うちの団長は乗馬だけじゃなく、武術も剣術も優れていますし、それに、上に立つ者としても申し分無い存在感です。」