男装令嬢は竜騎士団長に竜ごと溺愛される

二人でしばらくハクとブルーノに餌を与える。
意外と二匹の相性も良さそうで餌を取り合う事も無く、何となくハクがブルーノに歩み寄っている様にも見える。

「ハクが借りてきた猫のように大人しい。」

「普段こういう風に他の竜と食べることは無いんですか?」

「ああ、他の竜の餌まで食べたり本当に手のかかる奴なんだ。」
ため息を吐きながらカイルは言う。

「ブルーノは雌なんじゃないかと俺は思う。」

「雌ですか⁉︎」
本来、竜には雄、雌の区別はないと聞いていた。子孫を残す為、死の手前で卵を産むが、竜は生涯群れをなす事なく単独で行動する生き物だと教わってきた。

「顔付きが他の竜とは違って優しいんだ。
初めて見た時から思ったが、目つきが特に優しい。それに、リューク殿と一緒にいる時は世話を焼く母親のように見える。」

「そうでしょうか。
僕が産まれた時からずっと一緒なので気心が知れているせいじゃないですか?」
ハクとブルーノの顔を見比べる。

確かにハクの方が鋭い目つきでブルーノは凛々しいながら丸くて優しい眼差しだ。

性格的なのか、年を重ねてブルーノは穏やかになっただけなのかも知れないけれど、800年以上生きる竜の生態は身近な生き物でありながら、あまり知られていない。

他の竜をこれ程近くで見た事がないラサは個体差の違いでは?と思うくらいだが、これまでたくさんの竜を見てきただろうカイルが言うのなら一理あるのかも。
そう思いながら、本人に聞いてみようと思い立つ。

「ブルーノ、貴方は雌なの?」

首を左右に傾ける。きっと雌と言う言葉自体分からないのかも知れない。

はははっと笑い、カイルはブルーノの頭を撫ぜながら、
「竜にとっては性別なんてどうでもいいのかもな。」
と言う。