男装令嬢は竜騎士団長に竜ごと溺愛される

「失礼します。皆を連れてきました。」

そう言って、副団長が男達を三人引き連れ部屋に入って来る。

失礼ながら、この中ではカイル騎士団長が一番優しそうだと密かに思う。

「それはそうと、団長さっきから一緒に居るその少年は誰ですか?」
赤毛で茶色の瞳の副団長は見るからにチャラい、いや、軽い感じでカイルに話しかける。

「紹介が遅くなった。
彼はボルテ公爵の御子息リューク殿だ。」
カイルは立ち上がり、サラの横に並ぶ。

「えっ⁉︎
報告にはリューク殿は20歳過ぎだって書いてありましたが?
どう見ても子供にしか見えない。」
一番体躯が良い黒髪の男がサラの顔を除く様に近づく。

「おい!あまり近づくな。
公爵様の御子息だ。失礼のない様に。」
カイルがギロっと睨むと、大きい身体を縮こませ頭を掻きながら離れる。

「それについては先程確かめた。
ボルテ伯爵の青い竜ブルーノに合わせて頂いたんだ。
リューク殿が呼び寄せた。後継者以外不可能だ。」

「あっ!!そう言えば先程、中庭に見かけない青い竜が昼寝をしてると報告が。
あれがブルーノですか!
てっきり野生の竜が入り込んだのだと思っていました。」
筋肉隆々の色黒の男が言う。

「ダン、空からの侵入者に対して警戒が甘い。
ブルーノが舞い降りた時、守礼本部はなにも反応しなかった。
五班は早急に解決策を考えろ。」

「はっ!!」
色黒の男は姿勢を正しく敬礼する。

カイルの一声で四人が一斉にビシッと背を正す。
「後、北門の門兵。
訪問者に態度が悪い。教育し直せ。」

カイルは特に怒っている訳でも無く淡々と話すだけなのに、空気がリピッとする。

「はっ!!」

普段からどれだけ恐れられているのか、そして隊の誰もがこの騎士団長に一目置いているのかが、初めて会ったサラでも分かるほどだった。