「さぁ、そろそろ出発するぞ。
あまりのんびりしてるとマリー達に先を越される。」
カイルがそう言ってサラの顔を覗きこむ。

「はい、行きましょう。ブルーノがさっきからずっと待ってます。」
ベランダを見ると、ブルーノがこちらに視線を向けて心配そうに見つめていた。

「ララさんにお別れをしてきます。」
サラはすっかり元気になってソファから立ち上がる。

廊下にそっと顔を出すと、ララとショーン、後に数名の団員が話をしながら待っていた。

「すいません、お待たせしてしまって…。」

「ララさんも心配させてごめんなさい。」

「いえ、私の方が考慮が足りなくて申し訳ありませんでした。」

「私が感情的になってしまっただけです。もう大丈夫だから。」
しきりに謝るララに笑いかける。

「ショーン団長、忙しいのにわざわざこちらに来て下さり、ありがとうございます。」

「本当ですよ。忙しいのに手伝いもしてくれず、俺を置いて先に帰るなんて…カイルに言ってやって。」

「おい…。俺がまるで悪いみたいな言い方は辞めろ。お前の処理能力が無さ過ぎるせいだ。今まで逃げて俺に押し付けきた報いだと思え。」
カイルが厳しく抗議する。

「えーー、血も涙も無い…。」
がっくりと肩を落とすショーンを補佐官が宥める。

「…後は頑張れ。」
カイルは冷たくそう言ってショーンを一暼する。
「もっと何か助言とか無いのかよ。」

「ショーン、もうカイルを解放させてあげろ。今まで、十分やってくれただろ。」
サラに剣の指導をしてくれたゴイル隊長がショーンを宥める。 

「しかし、リューク殿がこんな可愛らしい女性だったとはな。知らなかったとは言え申し訳なかった。」

「そんな気にしないで下さい。私はとても嬉しかったです。」
サラは懐かしくリュークと呼ばれてた時の事を思い出す。

「俺は始めっから、女子だって思ってたのに皆が疑わないからさぁ。」

「まぁ、それはもういいじゃないですか、結果的にカイル様に春が来たんだから。」
最年少でありながら、竜の世話を全て任されているカミルがそう言う。

「お前に言われると、何か腹が立つな。
竜達の事、お前に全て任せたぞ。何かあったら連絡をくれ。」

「はい。よろしくお願いします。」

「おい!俺とは全然対応が違うんじゃ無いか?」
ショーンが2人に絡む。
「お前は少しぐらい1人で頑張るべきだ。」