男装令嬢は竜騎士団長に竜ごと溺愛される

しばらくすると、
何処からか羽音が聞こえてきた。
ひと風ファーと吹上げてブルーノが降りてくる。

「ブルーノ。ありがとう来てくれて。」
サラはブルーノの首に抱きつく。

「ブルーノ久しぶりだな。」
カイルは当たり前のように、サラの横からそっと大きな手を伸ばしブルーノの頭を撫でている。

サラは思わずその光景を凝視する。 

「凄いです。カイル騎士団長殿は…
普通、家竜は飼い家の者にしか身体を触らせないと聞きます。

ブルーノがこんなにも自然に貴方を受け入れているなんて驚きです。

父の家臣の者だって触れられないのに…。」

驚きと尊敬の入り混じった熱い目線をサラから送られてカイルは少し戸惑いをみせる。

「俺の場合はちょっと特殊で…
偶然拾った卵からハクを育てたせいか、自然とどの竜も触らせてくれるんです。」

「あの、その…敬語辞めて頂くわけにはいきませんか?…私はカイル団長よりかなり歳も下ですし…なんだか壁を感じてしまいます…」

カイルはサラをジッと見つめてくる。

「了解した…。リューク殿がそれでいいのなら。」

「リュークと呼んでください。」

「では、俺の事はカイルでいい。」

「えっ⁉︎
それは無理です。カイル団長を呼び捨てなんて恐れ多くて…。」
まだ、何か言いたげなカイルを振り切ってサラは急いで話を変える。

「それにしても、どの竜とも仲良くなれるなんて羨ましいです。」


「…羨ましいか?
俺が竜の小屋に行くと少々厄介な事になるが…。
ここにいる竜は、竜騎士団で拾ってきて、ほぼ卵から育てた若い龍なんだ。」

「竜は自分の死期を悟ると卵を1つ生むと聞きました。」

「そう、ここにいる竜のほとんどが戦いで傷つき死んでしまった竜の子供なんだ…。
だからまだ若く、1番年長がハクで20歳だ。
ブルーノは250歳くらいだったか?」

非道で冷酷?屍の山を築く?
この心優しいカイル竜騎士団長が?
何故そんなレッテルを貼られてしまったんだろうと、サラはふと思う。

「はい。今年で255歳になります。頭のいい子で不思議と話が通じるんです。

あの、一つ質問していいですか?
この隊に、貴族出身の方はいらっしゃらないのですか?」
素朴な疑問を投げかける。

それと言うのもカターナ国では竜を所有出来るのは貴族だけと決められていたから、一般庶民が普通に竜を所有出来るここリアーナ国の現状が信じられない。