「少し足元が暗いので、お気を付けて。」
カイルは小さなランプの灯りでサラの足元を照らし、誘導する様に前に立ち歩き出す。
扉を開けると薄暗いトンネルが、三メーター程続いて、不思議な空間だった。
壁だと思っていた白壁は建物だったのだと気付く。
「この建物は一種の要塞になっているんです。」
カイルは静かに説明する。
先程まで、低く響く声が怖いと怯えてしまったが、不思議と今は心地良く安心感を与えてくれる。
「リューク殿はお一人でこちらに来たのですか?」
「はい。訳あって母国には申告せずに来た為、目立たないように一人、竜に乗って来ました。」
そしてサラにゆっくり話しかける。
「何か私に大事な用があるのでは?」
鋭い眼差しはランプの灯りでいくらか優し気に見えるが、まるで心の中全てを見抜く様な雰囲気にサラは緊張する。
こんな聡明な方に男と偽って近づくなんて、なんて罪深い事をしてしまったんだろうと泣きたくなる。
ここで女である事を明かすべきか迷う。
竜騎士団は女人禁制だ。
働く者さえ女子はいないとルイから聞いている。
竜達が嫌がるからだ。
「あ、あの…、実は…。」
カイルはジッとサラを見つめ、身動き一つせず、発するひと言を待つ。
サラは動揺で瞳が揺れ、今にも涙が溢れそうになるのを必死で堪える。



