男装令嬢は竜騎士団長に竜ごと溺愛される

「国王陛下はその事、ご存じなのでしょうか?」

「了承は得ている。好きな様に生きろと言われた。」

サラは複雑な気持ちになる。
竜騎士団員の中には、カイルに憧れて入団した者も沢山いると聞いていたし、何より軍服姿のカイルがこの先見れないのかと寂しくなる。

でも、いつも戦いの最前線に立ち、命を晒して生きてきたカイルを心配し、祈り続ける日々は無くなる。
サラは寂しいだけど嬉しい、複雑な気持ちになった。

「サラは、喜んでくれないのか?」
カイルは、俯きがちに思案にくれてるサラの顔を覗き込む。

「嬉しいです。
もう、戦に行くカイル様を心配して見送らなくても良いのですから。
でも団員の方達の気持ちを思うと複雑です。きっと、カイル様を慕って入団した方も多いでしょうし…。」

カイルを見上げてサラは問う。

「カイル様がやりたい事とは?」

「俺はサラを守りたい。この先もずっと、側に居続けたいんだ。
それに、竜についての研究もしたいと思っている。」

「私のせいですか?」

サラは我慢しきれず涙が溢れる。

今までカイルは団長として、どれほど努力し鍛え上げ、命を削り仲間を助け闘ってきたのか。自分のせいで、その全てを捨てさせてしまうのはやるせない。

「自分の為にそうしたいんだ。
今まで俺は死ぬ為に生きていた様なものだった。
だけど、サラに会って死ぬのが惜しくなったんだ。サラの側で共に生きたいと。
だから、泣かれると複雑だ。」
そう言って、サラの頬に流れる涙を拭い優しく抱き寄せる。

「ごめんなさい。泣くつもりは無かったんです…。
ただ、私のせいで、今までのカイル様の努力を、全て捨てさせてしまうのかと…」

サラはぎゅっと抱きしめられる。
「軍人の為の称号なんてどうだっていい。
それと引き換えにサラが手に入るのなら、惜しくない。」