男装令嬢は竜騎士団長に竜ごと溺愛される


「何をしている?」

低く落ち着いた声が静かに響く。

「はっ!カ、カイル団長、おかえりなさいませ。」
慌てて門兵はサラの背後の人物に敬礼をする。

えっ…、今、カイル団長って言った?……
サラはそっと後ろを仰ぎ見る。

「俺は、何をしていると、聞いている。」
ゆっくりはっきり言う重低音の声に、門兵もサラも体を震わせ身を固める。

「はっ!
このガキが突然、団長に会いたいと言ってきた為、約束も無いのに簡単に会える方では無いと伝えていました!」
緊張した門兵は敬礼をしたまま叫ぶ。

「ここに訪れた人は皆、客人だと思えと教えられなかったか?」
一方、背中側のカイル騎士団長は落ち着き払った声で冷静に言い放つ。

「その通りであります!」

「では、
何故客人である少年が突き飛ばされているんだ。」

「も、申し訳けございません!」
直立不動で敬礼していた門兵は、バサっと音を立て、頭を90度に傾けおじぎをする。

「見たところ貴様は五班のカールだな。
この事は班長に伝えておく。それ相応の罰を与えられると思え。」
カイル団長から鋭い目で射抜かれたカールは先程の堂々とした態度とは裏腹に頭を下げてうなだれる。