男装令嬢は竜騎士団長に竜ごと溺愛される

夕方、カンナはサラに食事を届ける。

「サラお嬢様、少しは口にした方が早く良くなりますよ。」
なかなか進まない食事が心配になって声をかける。
「ごめんなさい。
せっかく用意してくれたので食べたいんだけど…喉が痛くて飲み込めないの。」

今晩は、病人でも食べられようにパンをミルクに浸したパン粥や、柔らかく煮込んだ野菜スープ、食べ易い大きさに切った果物はヨーグルトにあえ、食べやすくしてみた。

「では、果物だけでもどうですか?
うちのご主人様がサラ様の為にと、沢山持って来て下さいましたから。」

「カンナさんとマリーさんは団長のお屋敷からわざわざ来てくれたの?」
サラが訪ねると,嬉しそうにカンナは言う。

「そうなんです。
うちのご主人様はなかなか帰って来ないので、それはそれは暇を持て余していました。
家族の方も居ませんし、ほぼ使用人の家みたいな感じですよ。」
ふふふと笑うサラは、なんとも可憐で可愛らしいとカンナは思う。

カンナがご令嬢に持つイメージは、いつも不機嫌で嫌な事があると使用人に当たる様な意地悪な感じだった。

しかしサラはと言うと、体調が悪いにも関わらず物腰が優しく、使用人にも気配りを忘れない。
この方だったら是非お屋敷に来て欲しいわ、とつい意気込んでしまう。

「我がお屋敷には薔薇園がありまして、専属の庭師が代々お世話をしています。
でも、ご主人様はまったく持って興味が無く、本当、宝の持ち腐れですわ。」
カンナの話を聞いていると、普段のカイルが垣間見れてなんだか嬉しく思う。

「カイル団長は忙し過ぎて、きっと心に余裕が無いのね。
綺麗なお花を見て和める程、世の中が平和になれば良いのに…。」

「確かに、我が国の平和を守る為に日夜頑張っているご主人様ですからね。我々の誇りでもあります。
とても優しい方なのに、少し前まで世間からは鬼などと言われてましたし。
そうだ、サラ様がお元気になられたら是非、お庭を観に来て頂きたいです。」

「ありがとうございます。是非観てみたいです。」
サラも、普通令嬢はその様に優雅な日々を過ごすのだと気付かされる。
自分の事を顧みて苦笑いをしてしまう。

「私、実はこちらに来てからずっと男装をして過ごしいたので…そう言った令嬢らしい過ごし方を忘れていたわ。」
くすくす笑うサラを見つめて、カンナは驚く。