男装令嬢は竜騎士団長に竜ごと溺愛される

「父と話しは出来ましたか?」

貴賓室へ向かいながらカイルに問う。
あれほどまでに会いたかった父だが、いざその時になるとなんだか怖い。

カイルの話しでは、長い間薬を吸わされていたらしく意識も混濁して歩く事もままならなかったらしい。
ふくよかで優しく笑う父しか想像出来ないサラはやつれて弱ってしまった父に会うのは勇気がいる。

「まだ、会話は出来ていない。
聖水を飲ませても、意識が混濁していたから…。でも、さっきサラが届けてくれた聖水でもっと良くなってるはずだ。」

カイルは軍服姿で先を歩く。
こんな夜中にわざわざ正装しなくてもと思うのに…。礼儀だからと譲らなかった。

サラはと言うと、兄のお下がりのパジャマはさすがにまずいと膝掛けをストール代わりに羽織って見た……
ルイに怒られるのは覚悟の上だけれど…。

「どうした?」
サラは無意識にカイルの制服の裾を掴んでしまっていた。

「あっ!ごめんなさい。…な、何でも無いです。」

「変わってしまった…父上に会うのが怖いか?」
カイルはサラの顔を覗きこむ。
「…大丈夫です。生きていてくれただけで…。」
唇をきゅっと引き締めてサラは言う。

ぎゅっと握りしめた手が震えてしまう。
その手をカイルはそっと大きな手で包み込む。
扉の前まで、カイルはサラの手を繋いで歩いてくれた。大きくて温かい手。不思議と安心感を与えてくれる。