男装令嬢は竜騎士団長に竜ごと溺愛される

翌朝早くまだ日が昇る前に、マーラの店には人知れず沢山の民が集まって来た。

皆、口々にサラとの再会を喜びボルテ伯爵の釈放を願い、そしてリュークへの追悼の気持ちを分かち合った。

それぞれ投げ無しのお金をサラに渡してくれたり、ブルーノへと野菜や果物も沢山持って来てくれた。

「皆さん、朝早く駆けつけてくださってありがとうございます。お父様が早く無実の罪から釈放されるように、全力を尽くします。
どうかそれまで希望を捨てずに待っていて下さい。」
サラは精一杯の感謝を込めて頭を下げた。

「あまり長く集まっていると密偵に見つかってしまいます。離れ難いけど…いつもの生活に戻って下さい。」
皆はそれぞれ1人ずつサラと握手をかわし、いつもの生活に戻って行く。

「マーラいろいろありがとう。
それに皆さんを集めてくれて、こんなにも味方がいてくれる事に感動し心強く思ったわ。

いろいろ頂いたのに私からは何も返せなくて申し訳ないのだけれど…」

「気にしないで下さい。
皆んなお嬢様に会いたかったのです。
元気でボルテ公爵様と共にここに帰って来てくれる事だけが望みなのです。」


「ありがとう。

…これは、傷を癒やしてくれる不思議な水なの。もしも誰かが命を落とすような傷を負うような事があるならば…その時はこの水を使って。」

サラは旅立つ前、ブルーノが教えてくれた不思議な湖の水を汲んで持って来ていた。

手のひらくらいの小瓶に水を分け与える。
水は小瓶の中で七色に光っていた。

「なんて綺麗な水でしょう。…大事に使わせて頂きます。」
マーラは手を合わせてから小瓶を受け取りそしてサラと抱き合ってまた逢えることを祈りさよならをした。

明け方前の淡い空の中、

サラはブルーノと共に隣国リアーナへと旅立つ。