男装令嬢は竜騎士団長に竜ごと溺愛される

「ここを登り切ったらもう少しです。」
戻って来たカイルはルイにそう告げ、またボルテを担ぎ歩き出す。

服には返り血を浴びている。この男の狂気と優しさが垣間見える。
敵に回せば鬼だが味方ならこれ以上頼りになる男はいないだろう。

階段に残党がうめいている。切られてはいるが息はあるようだ。

ルイは思う。
鬼になり切れては無いんだなと、どこか安堵する。
軍人の中には修羅に落ち、人の命の重みを忘れる奴もいる。

彼はきっと懺悔しながら生きているんだろう。
亡くなった命の重さを抱え、今いる仲間の命をも守り、自分自身の幸せとは無縁で、誰かの為に命を惜しまず……軍人としては優し過ぎる。

階段を登り切ると長い通路が続く。
上での戦闘もまだ終わっていない様子。

前後を警戒しながら歩く。

2、3歩前の部屋のドアが突如開く。
カイルから伏せてと合図が送られボルテ公爵を庇いながら床に伏せる。

先頭にいた密偵が音もなく近付き、一撃で倒す。まだ、部屋の中には人が居そうな気配がする。
カイルは近くにある掃除道具入れから長いデッキブラシを2本取り出し密偵に投げ渡す。

それをドアが開く前に巧みに壁とドアの間にデッキブラシを挟み突っ張らせ開けない様にする。
中からドンドンと叩かれドアが揺れる。

「時間の問題だな、先を急げ。」

カイルは密偵を急がせ振り返り、ルイを思いやる。

「大丈夫ですか?」

「ああ、平気だ。なんなら担ぐのを代わるか?」

「大丈夫です。」
カイルは微笑し、先を行く。

外に出るドアにたどり着く。