男装令嬢は竜騎士団長に竜ごと溺愛される

「この先だってきっと普通に会えますよ…。

国は離れてしまうかもしれませんが、たとえお父様が地位を取り戻したとしても、私は令嬢に戻るつもりはありません。」
歩きながらサラは言う。

「…それは無理だろう。
ボルテ公爵の後継は今やサラしかいない…
ブルーノも世継ぎはサラだと決めたんだ。」

「でも、父が戻ったらブルーノは父と居るべきです。
私は女ですし、カターナ国では代々家を継ぐのは男性と決まっていますから。」
出来ればこの話は早く止めたいとサラは思う。

「それならば、普通男子の居ない貴族は婿を取るのではないか?」

「私には従兄弟も居ますしいざとなったら継ぎたい人はそれなりにいます。
親のいいなりで結婚をするつもりもありません。」

「カイル団長は、結婚だけが女の幸せだと思っているんですか?」
サラが珍しく強く言うので、カイルは目を見張る。

「いや、そこまで深く考えた訳では…。
きっとお父上はそう思うだろうと言うだけだ。」

「私、結婚するなら好きな人としたいです。それが駄目なら結婚はしません。」

「…変わったご令嬢だな。」
そう言ってカイルはハハハっと笑う。

「男装してここに乗り込むくらいのじゃじゃ馬ですから。きっと貰い手だってい
ませんよ。」
ふふっとサラも笑う。

「…そうか。
貰い手が誰も居なかったら俺が貰ってやる。乗馬ぐらいは教えてやるよ。」
きっとからかってるんだとサラは思う。少し心がズキンとするが、軽く笑って言い返す。

「…そう言うカイル団長は何故結婚しないのですか?」
一瞬サラに目をやって、
「いつ死ぬか分からん男に嫁ぎたいヤツなんかいないだろ…。」
と呟く。

「じゃあ。誰もお相手がいなかったら私がお嫁に来てあげますね。きっと、退屈させませんよ。」
ニコリと笑うサラをカイルは足を止め、射抜くような目で見る。

「…本気にするぞ…。」
ため息と共に小さく呟き、また歩き出す。

「なんて言いました?」
カイルの顔を覗き見てサラは首を傾げる。

まったく無自覚に可愛いのは自制して欲しい。
「…何でもない。」
そう言って、わざと早歩きするカイルにサラは小走りで追いかける。

「もう、急に早く歩かないで…待って下さい!」
サラは息が切れるほどだ。
いつも私に合わせてわざわざゆっくり歩いてくれていたんだなぁと実感する。

どこまでも優しくて不器用な人。

なんだか追いかけっこをしてるみたいで楽しくなる。
「ふふふっ」

「何、笑ってるんだ?」
カイルは怪訝な顔で振り向く。
「いえ、団長がいつに無く大人げないから。」
そう言ってしきりに笑う。
カイルは苦笑いする。

いつの間かハクの居る厩舎に到着する。