男装令嬢は竜騎士団長に竜ごと溺愛される

サラに出来る事は何も無い。ただ無事を祈るだけだ。

「お帰りをお待ちしています。ご武運をお祈りします。」

「一つだけ…お願いがある。」

「…はい。」

「泣き顔は俺以外に見せるな。」

サラの頬につたる涙をカイルはそっと拭く。

「普段はこんな泣き虫では無いんです。
カイル団長がいつも泣かすから…」

ちょっと頬を膨らませてサラは怒る。

サラに握られている手をそっと外し、両手でそっと抱き寄せる。

サラの涙が止まるまでずっと抱きしめていた。

離れ難いなとカイルは思う。サラの温もりがもはや自分の安らぎになっていて、事あるごとに抱きしめてしまう。

これ以上距離を詰めてはいけないと頭の中で警告音が鳴っている。
身分差も立場もすべてかなぐり捨てて、自分のものに出来たらと。

逃げる事なく腕の中で収まっているサラの気持ちを知りたいと思うのも罪なのか…

しばらくすると涙が止まったサラが我に返って離れていく。

「…すいません。お仕事しなきゃいけないのに…。」

サラは恥ずかしそうに、冷めてしまった紅茶を一気に飲んで一息付き、片付けを始めてしまう。

カイルはコーヒーを出来るだけゆっくり飲んでサラの動きをジッと見つめる。

「部屋まで送る。」
そう言って立ち上がる。
「大丈夫です。すぐ下の階ですし…お仕事を」

「その顔は誰にも見せられない。」
被せ気味にそう言ってドアを開けてサラを待つ。