コーヒーと紅茶を入れ机に置く。
サラは向かいのソファに座ろうとしたが、カイルが座るソファの横をトントン叩くので、緊張しながらそっと隣りに座る。
「俺が孤児院育ちなのは知っていたんだな。」
ポツリとカイルが言う。
「誰も産まれ出る場所は選べません。
私はたまたま公爵の家で生まれ育っただけで、カイル団長はたまたまご両親を亡くされた…。
その与えられた環境でどう生きるかは本人の努力次第です。
カイル団長は人並み外れた努力をしたから、今の地位にまで上り詰めたのだと思います。
尊敬します。」
誇れる生い立ちでは無いがカイルは特に孤児院出を恥ずかしい事だとは思っていない。
ただ他者からどう評価されるかは別で、今まで差別的発言もされてきた為、自分からあえて誰かに話した事は無かった。
「俺の両親は、生まれた年の内戦で逃げ遅れて亡くなったと聞いている。
親の顔も知らないし、天涯孤独だから別に命も惜しいとは思わない。
だから、誰かの盾になって死ぬ事は雑作もない。」
なんて事はない話しだと言う風に、カイルはコーヒーをひと口飲む。
サラは心が震え、耐えていないと今にも涙が出そうだった。
膝の上で握りしめた手が震える。
もっと自分を大切にして欲しい、と言いたいのに…それは、カイルの信念を否定する事になるのだろうか…
「このクッキー美味いな。サラも食べてみろ。」
そう言えば、いつからか私の事を呼び捨てにしてるとサラは気付く。
少しは心を開いてくれているのだろうか。
それを嬉しいと思う気持ちも、彼の邪魔になるのだろうか…
「頂きます…。」
サラは震える手でクッキーを一枚袋から取り出す。
カイルはその震えている細くて白い手をそっと握る。
「どうした?」
静かに言うが、サラに話すべき話しではなかったと少し後悔する。
「……悪かった。サラに話すべき話ではなかった…。」
サラはぶんぶんと頭を横に振る。
言葉にしようと思うと、涙が出てしまいそうだった。
だけど、何故かこの人を強く守りたいと思う。決っして死なせるものかと強く。
「私が…私がカイル団長を死なせたりしませんから…。」
涙が一粒溢れてしまう。
「…そうか。
俺は、サラの盾になって死ねたら本望だな。」
軽く笑ってサラの手を離す。
「絶対死なせたりしませんから!私が助けます。」
掴んだクッキーを手離し、カイルの手を両手で握る。
「そんなに簡単に死なないから、大丈夫だ。
その為に日々鍛えてるつもりだ。」
空いてる片方の手でサラの頭を優しく撫ぜる。



