碧が驚いていると、一瞬にして目の前の景色が展示と大きくなったスクナビコに変わる。彼に押し倒されてしまったようだ。

「碧……」

スクナビコが頬に触れ、碧の体がびくりと震える。そのまま唇を頰や首筋に落とされ、初めての感覚に碧はスクナビコの胸板を両手で押した。

「スクナビコ様、やめてください!」

「止めるなんて、いけませんね。私はただ褒美を貰っているだけですよ?」

碧の両手を一つに拘束したスクナビコが妖艶に笑う。碧はただ体を震わせ、「褒美?」と聞き返すことしかできない。

「私はこの村の人たち全員を救い、あなたに学問を教え、怪我人が出ればその都度治してきました。ですが、そのお代を支払っていただいたことは一度もありません。あなたはただ願うだけでしたね」

碧の顔が真っ青になる。神社でお参りをする際、普通ならば賽銭箱にお金を入れる。だが、裕福ではなく貧しい碧の家には賽銭箱に入れられるお金がなかった。そのため、いつも手を合わせることしかできなかったのだ。