「ソニア妃のこと?知ってるよ。だって、アタシが初めて騎士見習いで仕えたのがソニア妃だからね」

昼食時に食堂でピッツァさんは、あっさりとそう言ってのけた。
フェニックス騎士団に所属する彼女は、いつもは城の敷地外にいる。でも、たまたま今日は近衛騎士団に用事があり、ついでにと昼食も取りに来たようだ。

「そうだったんですか……」

アスター王子はついさっきまでいたけど、あまり食欲は無いみたいで菜っ葉しか食べなかった。残りはピッツァさんがもったいない!と平らげてる。

「ソニア妃が気になるのかい?」
「……はい」

ピッツァさんには隠しても仕方ないから、素直に認めた。

「御母上様のお話をされた時のアスター殿下が、とても辛そうでした。ぼくの両親は健在ですが……もし、同じくらいお父様やお母様が眠り病になってしまったら……そう想像するだけで怖いし、何をしても治らないなら自分の無力さに悔しくなると思うんです」

もしも、と想像するだけでかなり堪えるのに。アスター王子はずっと、ずっと独りで頑張って……それでも治らない。無力感と絶望感と。どれだけ苦しまれたんだろう。考えるだけで、涙が出そうになる。

「ぼくが出来ることは無いかもしれませんし、もしかしたら余計なお世話かもしれない。でも、アスター王子のために、なにかしたいんです」