アスター王子にはいくら訊ねても、何も話してくれない。
いい加減に痺れを切らして独自に調査を開始すれば、医務室のジョワンさんが明かしてくれた。

「ああ、きっとソニア妃のことじゃな」
「え?アスター殿下の御母上様…ですよね?」
「そうじゃ。今日は、ソニア妃が眠りについてちょうど15年になるかのぅ」

(そういえば……ユニコーン密猟事件の前に、アスター王子はそうおっしゃってた)

あのときのアスター王子はとても辛そうだった。わたしが立ち入れる領域ではないから、少し寂しく感じてしまったけど。

「アスター王子は……眠り病にはどんな治療も薬も効かなかった……と」
「そうじゃな…」

ジョワンさんは悔しそうな顔をして、握りこぶしを震わせた。

「無論、わしらも全力を尽くした。ありとあらゆる手を使った……じゃが、本当に何も効かぬのじゃ。あまりに効果がなく、自信を失い辞めた医師や薬師もたくさんおったな」
「そんなに……」

プロでさえ、お手上げなんて。ますますわたしが出る幕は無いように見える……でも。

なんだか、やけに会いたくなってみた。ソニア妃に。

そして、どうにかして会おうと画策してる最中、偶然食堂で見かけたのが、ユニコーン密猟事件以来のピッツァさんだった。