(まずは、右!)

まだ小柄な方を先に片付けないと、2人同時に攻撃されたら避けきれる自信がない。だから、ダッシュで灰色の男のふところに飛び込む……だけど。さすがに男は戦いなれているらしく、そう簡単にはいかない。横飛びで避けられた上にナイフを突き出され、ギリギリのタイミングで交わした。

(足、がら空きだ!)

足首のスナップを利かせ、低い姿勢で軽くダッシュし木剣で相手の膝を狙う。 けど、すんでのところで避けられた。

(当たらない…!)

小柄なぶん、軽さを利用して縦横無尽に動き回る。おまけに、大柄な男がハンマーみたいな武器を手にしてわたしに迫ってきた。  

ブン、と空気を切る音で攻撃を察知し、なんとかかわすことはできた。でも、ハンマーが地面にめり込み土埃が舞うほどの威力だ。一撃でも当たったらひとたまりもない。

(いったいどうしたら……?)

わたしが構える木剣だって、殺傷能力のある立派な武器だ。わたしがその気になれば男たちを殺せるだろう。

でも、わたしは。血を流したくない。無用な殺傷は避けたい。騎士を目指すのにそう思うのは、甘ったるいわがままなのかな?

2人相手だと、同時攻撃を避けたり防ぐのに精一杯だ。自分の能力と経験不足を痛感する。

「痛っ!」

遂に、攻撃を受けてしまった。灰色の男が隠し持ったナイフが、足に突き刺さった。

痛みで怯んだ一瞬、大男のハンマーが頭に襲いかかってきた。