「ぐあっ!」

木剣で男の顎を突き上げ、怯んだ一瞬で後頭部に柄を叩き込み昏倒させる。次に襲いかかってきた男の攻撃をバックステップで交わし、姿勢を低めてみぞおちに木剣を叩き込む。男がよろめいた瞬間、腕を軸に回転蹴りで足を払うと、そのまま前のめりに倒れた。

(今だ!)

すぐさま起き上がったわたしは、倒木に腰掛けていた貴婦人に駆け寄って声を掛けた。

「ここは危険です!こちらへ」

でも、貴婦人からはなんの反応もない。もしかしたら、失神でもしてるのかもしれない。アスター王子の方では流血沙汰になってる。深窓の令嬢ならばこんな暴力的な出来事なんて縁がないだろうし。

(仕方ない……アクアをなだめてなんとか連れ出さないと)

貴婦人をどうにかして逃がす方法を考えていると、複数の足音が聞こえてすぐに木剣を手に体を反転させる。すると、さっき昏倒させたはずの男どもが武器を手ににじり寄ってきた。

「このガキ……よくもやってくれやがったな!」
「ガキだからって、手加減なんかしてやらねえぞ、あぁっ!?」

わりと体が大きい屈強な男と、小狡そうなねずみに似た男。2人はじりじりとこちらへ近づいてくる。挟み撃ちの状態だ。

(一対一ならまだどうにかなるけど……複数……ヤバい……でも、アクアも王子も頼れない。今はわたしがこの女性を護らないと)

女性を背に庇い対峙したわたしは、木剣を中段に構えた。

(さあ……来い!)

ザッ!と2人同時に襲いかかってきた。