パンの生地は濃い茶色で、つぶつぶした食感に強い酸味。ずっしりと食べごたえがあるけど、サーモンの旨みと玉ねぎの甘みとレモンの酸っぱさが調和して、美味しい。噛めば噛むほどパンの独特な味が口に広がり、懐かしさに涙が出そうになった。

「このパン……ルイスリンプですね。ノプット王国で作られてるライ麦のパン……」
「そうだな……母上がノプットの出身でな、子どもの頃はよくそのパンでサンドイッチを作ってもらったんだ」
「アスター殿下の母上様も……ですか。うちは祖母がノプット出身でした。今はもう亡くなってますが……遊びに行くと、いつもフルーツサンドにしておやつに出してくれたんです」


アスター王子と自分の意外な共通点を見出して、驚いた。2人ともノプットの血が流れてるなんて……。
お隣のノイ王国の王妃様も、ノプット王国の王族出身と聞いたことがある。色素が薄く美しい容貌も、特徴なのかな?

(ちなみに、わたしは自分が美人とは思わない。思わないけど、別に悲観はしない。自分は自分で変えようがないからね)

「ああ、懐かしいな……ミリィ」
「はい」

アスター王子に呼ばれて、返事をする。すると、彼は意外な告白をしてきた。