アクアを飛ばして20分くらいだったろうか。
深い森に見えた木々が途切れ、開けた景色に目が釘付けになった。

木々が囲むように大きな城がすっぽり入りそうな広さの湖があって、滑らかな湖面が5月の青空と木々の緑を映してる。
時折通る風が撫でて水面を揺らし、きらきらと湖を輝かせる。
澄んだ水の下には魚が気持ち良さげに泳いでいた。

「わぁ……!綺麗ですね。こんな場所がお城の敷地内にあったなんて知らなかったです」
「デカルト・リッツ城は元々防衛用の水城だったからな。湖沼が点在する地域に造られた。今は大半を埋め立ててしまったが、ここは運よく残ってる」
「……そうでしたね」

そうだ。ゼイレーム王国は元々は水の民が作った国。海抜より低い土地が多いから、基礎を高くして水害に備えた建物も多い。
それだからデカルト城も例外なく基礎がかなり厚くて、1階が通常の2階の高さに造られている。

「それにしても、なぜ今日はここへ?」
「……」

アスター王子はアクアからストンと降りると、わたしが下馬するのを手伝ってくださる。アクアは草をむしゃむしゃやり始めたから、そのまんま好きにさせておく。そして湖畔までやって来ると、アスター王子は唐突に服を脱ぎ始めた。

「ちょ、ちょっと! なんでここでも脱ぐんですか!お部屋だけじゃなかったんですか!?」

アスター王子の露出癖が、とうとうここまで……!と白い目で見ていると、裸になった王子はそのまま湖にざばざばと入っていく。